LiDAR技術により、保管庫内の廃棄物の状況がリアルタイムかつ高精度に把握できるようになったため、廃棄物投入量の最適化が可能となり、プラントの安定運転が実現できました
トーマス・ハーマン
EEW Energy from Waste GmbH テクニカル・アドミニストレーター
EEW Energy from Waste GmbHー LiDAR体積モニタリングによる焼却プラント内廃棄物フローの需要主導型管理
EEW Energy from Waste GmbHでは、残留廃棄物熱処理兼発電プラントTREAの熱源となる廃棄物を巨大な貯蔵庫に保管しています。その大きさは長さ42メートル、幅14メートル、奥行きが33メートルあり、最大10,000 立方メートルの保管が可能で、廃棄物は使用時にボイラーに送られ発電用に供されます。ボイラーの負荷が最適であるように必要に応じて廃棄物を送り込む必要がありますが、そのためには製造部門が貯蔵庫内の廃棄物量を把握する必要があります。そうすることで、プラントを効率的に稼働させるのに十分な廃棄物が確保できていることが明確になるのです。
Blickfeld社製のLiDARセンサーが従来の計測技術に置き代わり、廃棄物の体積が連続的に記録できるようになりました。リアルタイムで3Dデータが作成され、プラントの運転を経済的に最適化することに役立っています。
従来は、1日に1回、手作業で貯蔵量を記録していました。その方法は、廃棄物保管庫の各所で廃棄物運搬用グリッパーの高さ位置を測定し、その結果に基づいて体積を算出するという方法でした。
同時に廃棄物の入出庫量も計測・記録されていました。しかし、この方法では廃棄物の重量、つまり質量しか記録されていないため、廃棄物のエネルギー含有量を確実に推定することはできませんでした。エネルギー含有量は質量と体積から導き出されるものであり、この2つから密度が、続いて熱価が算出されるからです。
効率的かつ環境に配慮した形でプラントを運転するには、週末や祝日においても信頼できるデータにアクセスでき、使用可能な廃棄物量に応じて処理量を調整することが不可欠です。
保管庫全体の監視用に3台のBlickfeld Cube 1 LiDARセンサーが設置されました。これらは、廃棄物の表面を詳細な3Dポイントクラウド画像の形で記録できます。このデータに基づいて、対応する認識ソフトウェアが保管庫内の廃棄物体積を算出します。廃棄物の入出庫に伴う質量データと組み合わせることで、廃棄物のエネルギー含有量をおおよそ決定することができます。すべてのデータは専用に開発されたモバイルアプリで利用でき、廃棄物処理量の管理が可能です。
EEWでは、収集したデータを焼却炉の効率的な制御に向けて廃棄物量モニタリングする目的だけでなく、モバイルアプリを通じて営業部門に公開し、その時々の状況に即した対応ができるようにする予定を持っています。
EEW Energy from Waste社について
EEW Energy from Waste GmbH (EEW) は、廃棄物および下水堆積物のサーマルリサイクルの分野ではヨーロッパトップクラスの企業です。現時点で、EEW Energy from Wasteはすでに気候変動や資源保護に重要な貢献をしており、循環型経済には欠かせない存在となっています。現在、企業グループが展開する17の拠点において、年間約500万トンの廃棄物を使用してエネルギー回収を行う能力を有しています。廃棄物からのエネルギー回収、廃棄物量削減、廃棄物由来の危険要因の安全かつ無害な方法による除去、金属くずやコンポジットのリサイクル等の業務に1,400人を超える従業員達が従事しています。私たちは同時に、廃棄物に含まれるエネルギーを効率的に利用し、工業向けのプロセス蒸気や住宅地の地域暖房、艇環境負荷の電力を生み出しています。私たちのサステナビリティ戦略の一環として、2030年までにカーボン・ニュートラル、さらに2040年までにカーボン・ポジティブな事業運営を行うという目標を掲げています。CO2削減に加えて、プラントでのCO2回収が取り組みの鍵になります。回収されたCO2は、地下への貯蔵や、将来のカーボン・ニュートラル経済における貴重な化学品原料として使用されることが予定されています。